もりとみずうみ

さみしさのやさしさ、いとしさについて。

白いヴェールの向こう側

楽しみに予約していた本が届きました。
小池真理子さんのご本は今まであまり読んだことがなくて、角川文庫から出版されている「不思議な話 怪奇譚傑作選」を購入したもののまだ積んである状態。少しずつ積読解消しなくては。

とにかく私は幽霊譚が好き。本も映画もゴーストと聞くと飛びついてしまいます。
幽霊譚のなにが好きって、怖くておぞましくて不気味なのに、美しいから。
幽霊譚の様式美、とでも言いましょうか。
特に私が好むのは所謂ゴシックホラーなので、かつては美しく華やかだった館、遠い日に亡くなった人のチェストに隠された日記や手紙、乾いた風の吹く墓地に咲く色褪せた野薔薇…そんなモティーフが散りばめられた世界で起きる不可思議な出来事。
明かされていく謎、悲しい真実、首筋に息を吹きかけられるようなぞくりとした読了感、全てが大好き。

こちらは私の大好きな幽霊譚の一部。
特にシャーリー・ジャクソンの「丘の屋敷」は寝苦しい真夏の夜に涼を取るために読み、あまりにも怖くて眠れなくなるということを毎夏繰り返しています。
ジョナサン・オージェの「夜の庭師」は現代作家の幽霊譚の中で一等好き!なお話。そういえば、ディズニーが映画化するお話は進んでいるのかしら…

上に挙げたのはしっかり恐ろしいお話ばかりですが、アリソン・アトリーの「時の旅人」や高楼方子さんの「時計坂の家」などの児童文学にも恐ろしさを抑えた、どこか儚く切ない幽霊(のようなもの)が登場しますね。
これらの作品で共通するのは幽霊、或いは過去の存在や世界と関わりを持った主人公の成長譚になっていること。
このタイプのお話もやはり好きで、何度も読み返しています。

ある時はヴェール1枚の向こう側に、ある時は鏡の中に、またある時は昼と夜の境目の時間にそっと…もしかしたら気付かずに足を踏みれてしまうかもしれない「あちら側の世界」や「過去の亡霊」たちの存在に畏れと憧れを抱きながら、物語のページを飽きることなくめくる日々─今年も夏がやってきました。