もりとみずうみ

さみしさのやさしさ、いとしさについて。

ノートという扉。

ペンやインク、シールや切手、レターセット……といった文房具が大好きな私。そのなかでもいっとう愛する文房具は、ノート。

文房具専門店であったり、企画展のグッズであったり、素敵なノートを見つけては買い込んでしまい、我が家には結構な数のノートが存在している。これはただ集めて満足するだけのコレクションではなく、きちんと活用しているコレクションだからとお財布の紐を緩めに緩め、日々ノートの蔵書(?)を増やしている。

 

以下はコレクションの中でも特に私の生活に欠かせない数冊たち。

 

まずは日記。これはハリー・ポッタースタジオツアー内のお店で購入できるもの。

羊皮紙を彷彿させる紙色と、その場で刻印を入れてもらえるのがお気に入りで、スタジオツアーに遊びに行くと二、三冊ストック買いしています。

日記と言っても日々の記録を毎日つける真面目なものではなく、思いついたことや読んだ本のメモなんかを箇条書きにしたり、長く思いを連ねたいときは思うまま書いたり、という自由なもの。

それから、その日Xでつぶやいたことも、ログのように書き写している。

 

一月のページのいくつか。

この日記をつけ始めるきっかけは、自分のXの古い古い投稿にいいねをもらったこと。

通知から投稿を開いて読んだ途端、自分でも忘れてしまっていた出来事やそれから想起した思い出、その気持ちが甘やかな懐かしさと共に溢れてきて、嬉しくなってしまって。

ブログに文章を書くより、Xの140字のポストは気軽なので、なんというか……気持ちや想いが瑞々しいまま言葉になっている気がする。

 

https://jardindelis.hatenablog.com/entry/2023/01/04/234723

この記事の過去のノートから見つけた言葉たちも、Xに投稿したその後にノートに書き写す、ということを日課にしていたころのもの。

こういう、日常からふわりと立ち昇った香りのような、“今日の出来事”というほど輪郭ははっきりしていないけれど、確かに心がなにかに反応した瞬間を、私は割とXに投稿しているのだと気付いて、またここ数年、それらを書き留めるようにしているのです。Xの投稿、古いものは消えちゃうしね。

このノートは無地なので、隙間に集めるだけで使えずにいたシールたちをえいや!と貼るようになり、ノートだけじゃなくシールの在庫もきちんと活用できて一石二鳥。

シーリングスタンプを押してみたり、チケットやショップカードや落ち葉が貼られていたり、娘からもらった手紙を挟んでいたりするため、一冊終わるころには二倍くらいの厚さに膨れ上がってしまうのだけれどそれもまた愛しくなる。

 

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次は私が言葉のスクラップブックと呼んでいるノートたち。10代の頃からつけ始めてずっと続けている大切なノートで、宝物をひとつ選べと言われたらこれを挙げるかも。

 

言葉のスクラップブックとは、読んでいた本の中の言葉や、観た映画のセリフ、好きな詩や短歌……とにかく私が好き!と思った言葉をスクラップブックのように貼り付け、もとい書き付けているノート。

口のなかで何度も転がしたくなるような響きを持つ外国語であったり、花や鉱石の学名、各国の別名、花言葉石言葉、それらにまつわる神話であったり、音楽用語や妖精を呼び出す呪文などなど、様々な言葉たちのコレクション。

二年ほど前、花にまつわる短編集を編んだとき、このノートに何年もかけて集めた花に関する様々な言葉たちにどれだけ助けられたか。このノートがなければ、あの作品たちは書けなかったと言っても過言ではないと思う。

すみれ色に妖精たちの夢のようなイラストのペーパーブランクス社のノートはもういっぱいで、現在は以前このブログでも紹介したすずめやさんのにじみノートを。

言葉のスクラップブックをつけ始めたきっかけはモンゴメリーの『ストーリー・ガール』を読んで。

魅惑的な語りで、不思議な魔法のように聴くものを惹き込む力を持つストーリー・ガールが読むのは、先祖から受け継がれたスクラップブックに書き記された一族の日々の記録。

それまでスクラップブックといえば雑誌の切り抜きを貼り付けていくもの、というイメージしかなかったのでそこに言葉たちを書き付けていくというアイデアが斬新に感じられて、まずはモンゴメリーの著作から好きな言葉たちをノートに写していったのが始まり。

十年以上続けているので、古いノートを見返すと、そこに書き付けられた言葉から当時の自分の想いや記憶がふわりと匂ってくる。

引き出しの奥にしまい込んでいたレースのハンカチから、遠い日にふきつけた香水の香りがかすかに立ち昇ってくるように。

言葉は、私自身から生まれた言葉たちではないのに、そこに書き付けたことによってそのときの思い出も一緒に保管されている。そしてその言葉と思い出からインスピレーションをうけて、新たな物語を紡いだりする。

このノートは私の創作にとっても必要不可欠な、大切なもの。

 

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これは本と、付箋と、ペンと共に日々持ち歩いてる小さなノート。大英図書館のグッズ。

これには読んでいた本ではっとした言葉選びや表現をメモしている。

一番新しいメモは三島由紀夫の『彩絵硝子』より

─雨が降っていた、薄荷の糸のように。

 

最後は、短歌のアナログ保管用のノート。ミドリの縦書き日記です。中心線が入っていて書きやすい。

欲を言うなら『なぞって書く格言』のページを減らしてノートページを増やしてくれたらさらに完璧。

友人からいただいた松栄堂の香りの栞 冬の星座を挟んでいるのでとても典雅な気分になれる。

 

以上が私の日々に欠かせないノートコレクションたち。

夜、しずかな部屋でお気に入りの紅茶をいれ、分厚くなったノートをひらいて今日見つけた言葉や感じたことを書き付けていく時間が、とても好き。

忙しない一日で、ごちゃごちゃになってしまったあれこれを、言葉に変えて、整理して、不要なものは捨てて、あるべき場所に閉まっていくような。自分の心の中に言葉や単語が並んだ図書館があって、閉館後にたった一人で蔵書整理をするようなひそやかな楽しさがある。

 

今日の分の整理が終わったら、目についたページをめくる。そこはいつかへと続く扉。

この扉はこれからも、いつまでも、増え続ける。