もりとみずうみ

さみしさのやさしさ、いとしさについて。

autumn vibes

今日の仕事帰り。たかい空の青色は澄んでいて、陽射しはあたたかいけれど、ふと吸い込む空気の質感がすっかり秋のすべらかさを伴っていた。

いつも遠回りして、わざと家とは反対側の出口から駅を出る。たいてい、そこから家までの道の真ん中あたりに位置する公園で一足先に帰宅した娘がお友達と遊んでいるから。

今日も彼女は長い手足にまだまだ子供らしい無邪気さと、その指先にほんのすこし背伸びした気だるさを曖昧にまといながらそこにいた。私に気付くと駆け寄ってきて抱きしめられる。途端に背伸びした気だるさは秋の空気にとけていく。私も抱きしめ返すと、彼女の身体から汗と、子供と、背伸びと、秋がまざったにおいがして。

それをもう一度吸い込もうとしたら、懐かしい甘いにおいが私の鼻をやわらかく撫でた。

金木犀のにおい。今年はじめての金木犀のにおい。

どこに木があるのか探そうとしたら娘が私の身体から離れて駆け出していく。花は見つからなかった。けど駆け出した彼女の髪の毛先から、つま先まで、正しい秋の輪郭をしていた。彼女が私のところに、秋の花のにおいを連れてきたのかもしれない。

背中を見送って歩く私の目の前を、落葉色の猫がゆったりと横切っていった。