もりとみずうみ

さみしさのやさしさ、いとしさについて。

憧れの魔女

1月26日、今年初の映画館は『カラフルな魔女』

 

角野栄子さんが好きと言いつつ、きちんと読んだのは魔女の宅急便シリーズとエッセイだけと思っていた。

けれど「え!小さい頃に読んでたあの本、角野さんの作品だったんだ!」ということが多々ある。彼女の著作は実に200作以上。そんなふうに、子供たちの読書時間と心の庭にそっと寄り添っているその姿がお話の魔女めいていてとっても素敵。

この映画はそんな角野さんを4年に渡って密着したドキュメンタリー映画

 

何年か前にNHKで彼女のファッションに密着した番組を観た。その時も思ったけれど、とにかくよく笑う。朗らかでチャーミングな笑顔、言葉は丁寧だけどユーモアに満ちて、話し方にはやわらかな質感の上品さ…憧れてしまう。

角野さんが小説を書き始めたのは、なんと昨日までの私の年齢と知って驚いた。子育てをしながら始めた作家業、何年も何年も書き続けて、今も書き続けている。

朝から17時まで執筆する姿にも背筋が伸びてしまう。

角野さんの語る言葉が本当に素敵で、鑑賞しながら頭の中にメモした。

 

・どんなに構成が良くても、私が書いていて気持ち良くなければボツにしちゃう。

・誰にでも魔法はある。私にとって書くことがそれだった。魔法は一つでいいの。中には見つけられない人もいるけれど、もし見つけたら絶対に手放さないで。

・魔女はあちら側(目に見えない世界)とこちら側(目に見える現実)の境目にいる存在。そんな魔女を書けば、私も行ったり来たりできるでしょう?

 

特に最後の言葉は厚かましいけれどとっても共感した。

私もずっと、憧憬に手を伸ばすように書いている。

きらにらとした煌めきと活力をもらうような映画だった。心は軽やかに、けれど信念は強く。物語るひとの魔法の秘密を覗かせてもらう。

 

角野栄子さんの他にも、例えば田村セツコさんやターシャ・チューダーやベニシアさんなど、私には憧れの“おばあちゃんが”何人かいる。

みな共通するのは、夢見ることを大事にしつつ、そんな世界と暮らしを守るためのある種の根性があると思っている。ロマンティック根性。夢みるだけじゃいられない、だけど夢みていたい、なら、やるしかない、の気概がとても好きだ。

自分のための根性ってそれはもう、一つの立派な矜持だと思う。

自分が歩いた道のあとに、カラフルな欠片や楽しげな音符が落ちているような、そんな生き方をしたいと考えながら、冷たい北風にキッと顔を上げて帰路に着いた。