もりとみずうみ

さみしさのやさしさ、いとしさについて。

Our bodies are our gardens, to the which our wills are gardeners.

 

1月18日

友人と観劇。

Casual Meets ShakespeareOTHELLO SC』

友人からよく話を聞いていた俳優さんが主演、そして大好きなシェイクスピアのオセローとのことで友人にチケットを取ってもらった。

ちょっとした縁があって、原作漫画やゲームを知らない2.5次元舞台を観に行くことが多い。2.5次元舞台というのは独特の構成や空気感を持っているイメージで、原作を知らなければそういうものとして楽しく観ていたけれど、今回大好きなシェイクスピアということで正直なところあまり期待値を上げないでおこうと思いながらシアターサンモールへ向かった。

結論から言うと、とっても良かった…!

初日だったこともあり冒頭はまだ役者陣も客席もあたたまっておらず“こんなものか”と思いかけたけれど、ストーリーが進むに連れ役者陣の演技が熱を帯び、私もどんどん引き込まれた。幕間無しの90分、あっという間だった。

ストレートプレイというのは、演者はもちろんのこと演出がよろしくないと飽きてしまうし、シェイクスピアは解釈やキャラクターへのフォーカスの当て方で描き出される物語の質感ががらりと変わるものだと思う。

カジュアルミーツ、と謳っている通り、シェイクスピアをより身近に、なおかつ原作の骨格や美しいセリフを生かしつつ現代演劇として作り上げるというコンセプトの舞台。この舞台の脚本、演出はとても私好みの塩梅だった。

友人の推しである主演の古谷さんは、自身を見せよう、ではなく作品や芝居全体を魅せようとする演技タイプの役者さんだったように思う。

ナイーブなオセローで、後半の狂気と諦観の愚かな哀しさがぐっと際立つ。キャシオー役の方もとても好きな演技をする方だった。

 

これは偏見であると自覚しているけれど、2.5舞台メインの役者さんの.5以外の舞台って、作品や演技というよりその役者さんのファンのためのファンイベのようなスタンスなのでは…?と思うことが多かったので、それを覆されるとても良い舞台だった。

私はとても狭量であることも自覚しているので、食わず嫌いも多い。けれど、感性が合う友人たちのお勧めはもっと身軽に食べてみようというのがここ数年の自分との約束だったので、今回はその身軽さに勢いをつけてもらった心地。

 

 

終演後、まだ興奮冷めやらぬまま友人と一杯だけお酒を飲んだ。私は少なくとも5,6年振りのアルコール!見事にまわってしまったけれど(お酒の味は好きなのに、とにかく体質に合わない)、舞台にしろ映画にしろライブにしろ、良いものを観たあとの語らいの時間というのは、他では得られない幸福感がある。

時計の針が動くごとにすこしずつ遠退いていく高揚への名残惜しさ。胸の奥の火照りと、目の前に広がる帰ってきた現実との温度差をさみしく思うような、安心するような。

そんな曖昧な揺らぎを舌の上でゆっくりと溶かすみたいに、語り合うのは楽しい。アルコールも手伝って、ふわふわとした心地で帰路に着いた。

とても良い冬の夜の1日。ちなみに、翌日しっかり二日酔いになったことも記しておく。