もりとみずうみ

さみしさのやさしさ、いとしさについて。

去年の鑑賞ノートから

2023年春。 パンズ・ラビリンスが期間限定で上映されると知り、早朝から映画館に駆け込む。 初めて観たのは10年以上前で、大まかなストーリーととにかく好きだったことだけは覚えている。そして今日改めて鑑賞して、心底好きだと確認した。 不条理で残酷な現…

月光スコープ Ⅳ半身/或いはSrSO4 mohs3‐3.5

半身/或いはSrSO4 mohs3‐3.5 世界は崩落した。 天の月が姿を消し、世界は色を失い、命あるものたち─ひと、翼あるもの、鱗もつもの、植物に至るまで─は朽ち果てた。暗闇の中ですべてが乾き、静寂の中で塵へと変わる。 硝子の割れた銀縁の眼鏡が、浜辺だった塵…

月光スコープ Ⅲ終末の実り/或いはSiO2 mohs7

終末の実り/或いはSiO2 mohs7 少年の家は海の傍にある。 海はこの小さな村の全ての営みの源だった。 透明な海水は飲水になり、泳ぐ魚たちは村人の食料になり、網にかかる貝が抱きしめる真珠はこの村の特産品として経済を支えた。 硝子のようにすみとおった海…

月光スコープ Ⅱ Mondenkind/或いはSiO2 mohs7

Mondenkind/或いはSiO2 mohs7 満月の夜にだけ、現れる夜店がある。 星のない真っ暗な天幕のような空で、地上をじっと見下す巨大な満月の夜。 あまりにも大きくて、あまりにも眩しいから、月面に刻まれた模様までくっきりと見える。 そこに刻まれているのは、…

月光スコープ Ⅰ魚たちのビオトープ/或いはCaF2 mohs4

魚たちのビオトープ/或いはCaF2 mohs4 ぼくの涙はモース硬度4の小さな結晶になった。 あまりに長い期間溜め込んだから、透明だった涙はぼくのかなしみを吸い込んで菫色に変わっている。 ぼくは結晶を、硝子の試験管に入れた。ちり、と硝子を結晶がひっかく冷…

新しい庭。

先日、創作についての悩みを書いたけれど、少しずつ土を耕しで土壌つくりをしています。 その一環で、あたらしい場所をひとつつくりました。 二次創作に関しては専用の個人サイトやXアカウントがあるけれど、ここは短歌や詩やエッセイ、絵の練習場所にするつ…

庭づくりのはなし。

創作は、庭をつくることに似ていると思う。私は庭師だ。 私がつくっている庭は決して大きくもないし、花の盛りに大勢の人が訪れるような場所でもない。 土を耕し、種を撒き、害虫や害草を駆除して、花が咲いたら、ちょっと良い紅茶を淹れて眺める。 時おり、…

1月の、楽しいの記録。

今月の、楽しいお出かけをまとめておく。 1月4日。西の魔女のお茶会inアニカフェ。お席が南で嬉しい。ランダムグッズでルチルくんが引けて嬉しい。 お隣の方が「サクちゃんと写真撮りませんか」と声をかけてくださる。私のルチルくん、お友だちの西師弟、お…

あたらしい遊び

去年の夏前から、ひそやかに始めた趣味があります。 それはオイルパステルで絵を描くこと。 幼い頃は絵を描くのが大好きだった筈だけれど、成長していくにしたがって『私は絵が下手なのだ』と思い込む様になっていてずっと絵を描くことはしなかった。避けて…

あたらしい日に。

明けましておめでとうございます。 新年早々の天災。そして事故。どうか不安な夜が早く明けますように。助けを必要としているひとが助けられますように。 犠牲になってしまった方々の御冥福をお祈りします。 心を揺さぶられる一年の始まりになってしまったけ…

二次創作において考えていること

一年のまとめを書いたあとだけど、どうしても言葉にしておきたいことがあるのでまた画面に向かっている。 私は、ソシャゲで二次創作をしている。書いているのは小説。ネームドキャラ×プレイヤーキャラ(性別は女性)という所謂夢小説だ。 私の書くお話は元々、…

いちねんのおわり。

気づけば年末。 この場所には、頻繁に顔を出すときもあれば、しばらく覗かず忘れた頃にやってくることもありました。 ブログは何年もやっていたけれど、ここで再び綴ろうと決めてから、日々の記録というよりももっとプライベートな、心の裡や大切な宝物につ…

200字に満たないものがたり。

tanka

こいびとのような楽器と、ひそやかな空間について。

Xでつぶやいたことについて、もう少しだけ書きたくなったのでここに綴ってみる。 私が音楽の道を歩んでいたときの話。 私の専攻は声楽だった。声楽、つまり歌。 歌の演奏というのは、なんというか、とても、オープン。 当たり前のことだけれど、口をひらき、…

秋のレシピ

11月がきた! 突然ですが、私には秋のレシピがあります。カレンダーをめくってNovemberの文字をみたらもう、嬉しくなって秋の楽しみを集めた頭の中のレシピをひらくのです。 といっても秋が特別好きというより、冬が一等好きで、その冬の予感をはらんだ秋の…

だって秋だもの

秋を自由に詠んでみる

白鳥座の導き

art

ひっそりと慈しみながら、大切にしたい場所がある。 自分勝手な気持ちを綴るなら、誰彼構わず教えたくはない場所。けれど、心に庭を持っていてその庭を育てること、愛すること、秘めることの静かな楽しみを知っているひと。そして同じ庭を持つ人への礼節を守…

インセンスの楽しみ

Azul Ashengrotto Jamil Viper Minami Natsume 以前別の場所に載せたものの再掲。

雨のessay

雨の日曜日。 私は、雨が結構好きな方だとおもう。 仕事の日、朝から雨が降っていると憂鬱になるし、少女時代はくせ毛だったので雨の日は学校に行きたくなかった。 それでも、雨の日の持つ空気や音やにおいは、昔から好きだった。 ここに来る時はいつも雨が…

言葉のスクラップブック

autumn vibes

今日の仕事帰り。たかい空の青色は澄んでいて、陽射しはあたたかいけれど、ふと吸い込む空気の質感がすっかり秋のすべらかさを伴っていた。 いつも遠回りして、わざと家とは反対側の出口から駅を出る。たいてい、そこから家までの道の真ん中あたりに位置する…

よるのにっき。

私はずっと、音楽で舞台に立っていた。 ほんの少女の頃から、やがて病で歌えなくなるまで。 私の専攻は声楽で、舞台と一口に言ったけれど大きなコンサートホールから小さなカフェでのコンサート、ホスピスの談話室まで、その種類は様々。私はオペラに興味が…

そんなわたしも、あの頃とはちがうわたし。

美しいものがすき、 お人形になりたいと言っていたあなたが 文通の封筒にカファレルのクラシカルなチョコレエイト缶やクリムトのポストカードを 忍ばせてくれていたあなたが リボンとレースとフリルとドロワーズを愛していたあなたが こいびとと、カノンくん…

地中に埋められた海に溺れに行く日の話。

今年はたくさん、ライブハウスに行っている。ライブハウス。音楽を聞く場所。見る場所。感じる場所。暴れる場所?どう表現したらいいのか分からない。 わたしは物心ついたときから今年の2月まで、音楽を聞きに行く場所はホール、或いは劇場と呼ばれる場所し…

夏の課題図書のおはなし。

わたしには、季節それぞれに課題図書があります。 例えば、まだ冷たい風が吹きすさぶ中でふと見上げた桜の枝先に小さな蕾が膨らみ始めているのを見つけたときに読む本。 公園の花壇や、お花屋さんに色とりどりの香しい花々が咲き乱れるときに読む本。 生ぬる…

やわらかな寂しさについて

昨日別の場所に書いたもの。 読んでいたのは、梨木香歩さんの「裏庭」。

「そばかす」

もう一年の半分が終わろうとしていて。私は慌ててこの半年に観た、聴いた、感じたことをノートやブログにまとめようと記憶や記録を手繰り寄せています。 美術展での展示リストや映画のチケットに走り書きされた私のメモは、時に解読不能のものも多くて、その…

甘く、辟易するような背徳と嫌悪の味。

新たに綴るブログ記事と同時に昔綴っていたものを少しずつ加筆修正していこうかなと思い始めて。 今日は、お友だちが私がお勧めした本を読み始めたとのことで、以前別の場所に書いたその本の感想を載せてみる。 ドット・ハチソン『蝶のいた庭』 あらすじ FBI…

誰が為のエレガンス

春休みの終わり、娘と久し振りにBunkamuraギャラリーへ行きました。 1920年代のパリ、ココ・シャネルと共に大戦後の時代を生きた画家マリー・ローランサンの展覧会。 《ローランサンとモード》展。 ローランサンは小さな頃から大好きな画家の一人! モーヴが…